進退をかけた2021年名古屋場所。白鵬は右膝に重い補強を施しながら15日目を迎え、見事15戦全勝優勝を果たした。しかし、その歓喜の裏で体はすでに破綻を迎えていた。場所後、膝の状態はさらに悪化し、続く令和三年秋場所への出場は不可能な状態に追い込まれた。
大相撲の歴史において、全勝優勝を飾った直後に引退を決意した例はきわめて珍しい。だが、名古屋場所の千秋楽で見せた鬼気迫る表情こそが、彼が土俵に捧げた最後のエネルギーだった。翌場所の休場を決めた瞬間、彼の中で現役生活の幕引きが明確な覚悟へと変わったのである。