インターネット上の一部終活情報では、「位牌はかさばるから、初めからすべて過去帳にまとめて位牌を作らなくてよい」といった極端な言説が散見されます。しかし、これは伝統仏教の現場から見れば深刻な誤解を招く危険なアドバイスです。
浄土真宗以外の宗派において、亡くなってすぐの家族に対して位牌を作らず過去帳のみで済ませる行為は、菩提寺から法要の受託を断られたり、親族から激しい非難を浴びたりする主たる要因になります。本位牌は遺族の悲嘆(グリーフ)を受け止める象徴的な対象であり、没後一定期間は位牌に向き合うプロセスが心理的にも不可欠とされているからです。
過去帳への集約が真に力を発揮するのは、三十三回忌や五十回忌などの「弔い上げ(といあげ)」を迎えた古い位牌の整理のタイミングです。仏壇内に何基も立ち並んだ先祖の位牌を、弔い上げを機に過去帳へ転記し、元の位牌を菩提寺へ納めることで、仏壇の秩序と清浄さを取り戻すことができます。
この際に行うのが過去帳の処分方法とお焚き上げ供養の一連の手続きです。役目を終えた古い位牌は、菩提寺に依頼して「閉眼供養(魂抜き)」の読経を行ってもらい、寺院の境内でお焚き上げ供養に付します。お布施の費用相場は、位牌1基につき5,000円〜10,000円程度です。また、過去帳そのものが劣化してボロボロになり新調する場合も、古い過去帳には先祖の生きた証が凝縮されているため、一般ゴミとして廃棄してはなりません。新しい過去帳へ文字を丁寧に書き写した後、古い過去帳を菩提寺に預けてお焚き上げしてもらうのが正しい仕舞い方です。