公園南端、上野駅側から石段を登った高台に鎮座する巨像が、公園の象徴である西郷隆盛像 歴史の舞台です。1898年(明治31年)に除幕されたこの銅像は、彫刻家・高村光雲(詩人・高村光太郎の父)が西郷本体を、後藤貞行が愛犬「ツン」を手掛けました。しかし、この像には歴史的な論争と複雑なドラマが秘められています。
除幕式当日、夫人の糸子は銅像を見るなり「うちの宿六はこげな人じゃなか(夫はこんな人ではありません)」と周囲に漏らしたという逸話は広く知られています。西郷は生前、写真を極度に嫌い、肖像写真が1枚も残されていませんでした。そのため、キヨッソーネが親族(弟の西郷従道ら)の容貌を合成して描いた肖像画をベースに制作されたため、実物との差異が生じたのです。
さらに注目すべきは、西郷が着用している衣装です。陸軍大将の正装ではなく、浴衣姿(着流し)に草履を履き、犬を連れて兎狩りに出かけるラフな姿で造形されています。明治政府に叛旗を翻した西南戦争で逆賊とされながらも、1889年の大日本帝国憲法発布に伴う大赦で名誉回復を果たした直後という時代背景があり、軍事的な威圧感を排して「庶民に愛された素朴な西郷像」として造立された経緯が、公文書や関係者の回顧録によって裏付けられています。