店頭で見かける「生食用」と「加熱用」の表記は、単に「今日獲れたか、昨日獲れたか」という鮮度のグラデーションではありません。食品衛生法において、生食用鮮魚介類には加工基準・保存基準・規格基準の3つが厳格に定められており、加工場の衛生環境や使用する殺菌水、保存温度(10℃以下・生食用冷凍は-15℃以下)にいたるまで、極めて高いハードルが課されています。
一方で「加熱用マグロ」に分類される背景には、いくつかの明確な理由が存在します。一つは、水揚げから加工、流通の過程で生食用としての温度管理基準からわずかに外れたもの。もう一つは、骨の周りや皮目、内臓に近い部位など、解体時に魚体の表面に付着した細菌が移りやすい部位をカットしたものです。見た目がどれほど鮮やかでドリップが出ていなくても、一般生菌数や大腸菌群の付着リスクが生食用の基準を超えている可能性があるため、加熱用マグロを生食する行為は極めて危険です。
「新鮮そうだから表面を削れば刺身で食べられる」という素人判断は禁物です。食中毒菌は目に見えず、味や匂いを変えずに増殖しているケースも多いため、パッケージの指示通りに中心部までしっかり加熱することが絶対条件となります。