被告自身の供述の中で最も際立っていたのは、母親に対する相反する感情の同居である。自分を置き去りにしたという深い怨嗟の念と、それでもなお自分を受け入れてほしいという切実な願い。この二律背反する心理状態が、彼の精神を極限まで追い詰めていた。
法廷で提示された母親の手紙や関連する証言記録によると、母親自身もまた被告との距離感に苦悩し続けていたことが窺える。しかし、被告にとって親の躊躇や拒絶はすべて「社会からの完全な追放」として捉えられ、やがて無差別な攻撃性へと変換された。被告の心の中で膨らみ続けた歪んだ愛情と被害妄想は、最終的に逃げ場のない惨劇へと結実してしまったのである。