日本の幼児教育において、節分は長らく「伝統の継承」と「善悪の二元論」を教える場として機能してきた。しかし、こども家庭庁が掲げる子どもの主体性尊重や、文部科学省が定める幼稚園教育要領、さらには改訂を重ねてきた保育所保育指針の根底にあるのは、個々の内発的な動機に基づいた学びの保障である。形通りの「悪い鬼を追い払う」というストーリーだけでは、現代の子どもたちの多様な感受性を捉えきれなくなっている。
日本幼児教育の父と呼ばれる倉橋惣三は、かつて子どもが自ら育つ力を信じ、大人が環境を整えてそっと導く「誘導保育」を提唱した。まさにその思想が、令和の造形現場で見直されている。保育所や幼稚園で目指されているのは、大人があらかじめ用意した正解のパーツを組み立てる作業ではない。「自分にとっての鬼とは何か」「どんな強さや弱さを持っているのか」を子ども自身が内省し、形にしていくプロセスそのものだ。