スポットライトを浴びる現在の華々しいポジションとは裏腹に、その足跡は決して平坦な道ばかりではなかった。小劇場の冷たい板の上で汗を流し、自主制作映画の現場で泥にまみれながら、徹底して身体感覚と台詞術を研ぎ澄ませてきた過去がある。
観客が数人しかいないような空間でも、役柄の息遣い一つに全神経を注ぎ込んできた地道な鍛錬。とりわけ人間の悲哀や剥き出しのエゴを演じ分けるヒューマンドラマにおいて、寺田が見せる陰影に富んだ芝居は、当時のミニシアター通たちの間でも語り草となっていた。不遇の時期に一切妥協せず培った強靭なリアリティこそが、どんな大作に放り込まれても埋没しない強固な作家性の根源となっている。