日本国内に自生するムラサキカタバミの最大の謎は、「種子を作らない(不稔性)」という点です。花粉を作る機能が退化しているため、種を飛ばして増えることはありません。それにもかかわらず、なぜ日本全国の庭や畑を埋め尽くすほどの繁殖力を持つのでしょうか。
その答えは、地下に形成される「鱗茎(りんけい)」と「木子(きこ)」の驚異的な増殖メカニズムにあります。
ムラサキカタバミの根元には、大人の親指ほどの「母球(親鱗茎)」があり、その下には半透明の太い「牽引根(けんいんこん)」が伸びています。この牽引根が収縮することで、球根を地中深く(深さ10〜30cm)へと引きずり込み、乾燥や寒さから身を守ります。さらに、母球の周囲にはケシ粒から米粒大の微小な「木子」が1株あたり数十個から100個以上びっしりと形成されます。この木子がわずかでも土中に残れば、それぞれが独立して新たな株へと再生します。