あの屈指の名場面の撮影は、一体どのような状況で行われたのか。現場関係者の証言によれば、役員会シーンの撮影現場は異様な熱気に包まれていたという。堺雅人と香川照之。日本を代表する演技派俳優ふたりが対峙したセット内は、まるで真剣勝負が繰り広げられる道場のような静寂が支配していた。
監督の指示を越え、演者同士の呼吸と間が生み出したのが、あの膝を震わせる無音の時間だ。台本上に書かれた文字の行間を、香川照之は肉体のあらゆる筋肉を駆使して表現した。土下座に至るまでに要した数分間。カメラが回り続ける中、NGを出すことなく研ぎ澄まされた一発OKを勝ち取った背景には、ふたりの役者が長年培ってきた途方もない集中力と、互いへの深い敬意が存在していた。