大衆文化はいつの時代も、この見えない苦悶を鋭く切り取ってきた。1999年のアカデミー賞受賞作『アメリカン・ビューティー』で描かれた、郊外の平穏な生活の中で魂を窒息させていく主人公の狂気と解放は、今見返しても背筋が凍るほどの迫力を持つ。一方で、コミカルかつ痛切に日常の崩壊を描いた『40歳からの家族ケーカク』のように、等身大の夫婦の摩擦を通じて老いと現実を受け入れていくヒューマンドラマも、根強い支持を集め続けている。
現在、NetflixやAmazon Prime Videoといった動画配信サービスを通じて、こうした中年の葛藤をテーマにした新旧の傑作に触れる利用者が増えている。他者の生々しいあがきを客観的に観賞することは、「苦しんでいるのは自分一人ではない」という深い安堵をもたらす。フィクションが持つカタルシスは、自己を客観視するための優れたメンタルケアとして機能しているのだ。