「熱が高くて苦しそうだから、なんとか体温を物理的に下げてあげたい」という局面において、発熱時にどこを冷やすべきかという医師の見解は極めて明確です。人体を効率的にクーリングするためには、皮膚の浅い層を太い動脈が走行している部位を集中的に冷やす必要があります。
具体的に冷却すべき急所は、以下の3箇所です。
- 首の左右両脇(頸動脈):脳へ向かう大量の血液が流れるポイント。
- 両側の脇の下(腋下動脈):腕へ向かう太い血管が集まる部位。
- 太ももの付け根(鼠径部・大腿動脈):下半身へ向かう循環血液量の多い大血管が存在する部位。
これらの部位を冷却すると、冷やされた血液が全身を巡ることで効率的に体内深部の熱を奪い、体温の下降を促すことができます。しかし、ここで多くの方が疑問に抱くのが「冷えピタを脇の下や首、太ももの付け根に貼れば効果があるのか?」という点です。
残念ながら、一般的な冷却シートをこれらの部位に貼っても、十分な解熱効果は期待できません。冷えピタの冷却力は水分ジェルの穏やかな気化熱によるものであり、太い動脈を流れる大量の血液を冷やすだけの熱容量を持ち合わせていないためです。さらに、脇の下や鼠径部は汗をかきやすく皮膚の動きも激しいため、シートがすぐに剥がれてしまうという実用上の難点もあります。
したがって、体温の上昇を抑えたり高熱による体力消耗を防いだりする目的であれば、冷えピタではなく「薄手のタオルを巻いた保冷剤や氷嚢(アイスバッグ)」を用いて、首の横、脇の下、鼠径部をピンポイントで冷却するのが医学的に正しい対処法となります。