本作を語るうえで避けて通れないのが、放送期間の中盤で起きたヒロインの途中交代劇だ。朝ドラの歴史において、主役が物語の途中で別の女優へとバトンタッチするという異例の事態は、当時の芸能界と視聴者に凄まじい衝撃を与えた。
第1部で主人公・高倉春希の若き日々を演じたのは沢口靖子だった。ひたむきで凛とした演技が視聴者の共感を呼んでいたが、過密な撮影スケジュールや脚本への解釈、精神的・体力的な極限状態が重なり、降板という苦渋の決断に至ったと報じられている。現場の張り詰めた空気は、当時のワイドショーや週刊誌でも連日トップニュースとして扱われた。
その重責を引き継ぎ、第2部から主人公を演じきったのが名取裕子である。すでに実力派女優としての地位を確立していた彼女だったが、国民的番組の途中登板というプレッシャーは想像を絶するものだったに違いない。だが、名取は見事に成熟した大人の女性の苦悩と強さを体現し、作品を完走へと導いた。この二人の女優による命がけのリレーこそが、ドラマ自体に唯一無二の緊迫感をもたらしたのである。