では、8枠を引いてしまった有力馬は完全に切り捨てて良いのでしょうか。現場の証言や騎手の証言録を丹念に紐解くと、この「死の枠」という固定観念を覆して馬券圏内に突っ込んできた名馬たちには、明確な共通点が存在することがわかります。
最大の好例が、2023年に大外8枠16番を引き当てながら2着に激走したスターズオンアースです。レース前の下馬評では「8枠16番に入った時点でノーチャンス」と絶望視され、オッズも大幅に甘くなりました。しかし、手綱を取ったクリストフ・ルメール騎手は、スタート直後に迷わずインコースへと切れ込む積極的な先行策を選択。最初の急コーナーを迎える前に先団の内ラチ沿いを確保するという、神懸かり的なポジショニングを披露しました。
当時のレース後の共同会見で、ルメール騎手は次のように述懐しています。「大外枠だからといって後ろに構えていては、外を回されて勝負にならない。ゲートを出た瞬間に前を取る判断をした。馬の二の脚と操縦性が完璧だったからこそできた作戦」。
この証言にこそ、外枠不利の呪縛を破るための決定的な条件が凝縮されています。過去に外枠から好走した馬たちの共通項を抽出すると、次の3点に集約されます。
第1に、卓越したゲートセンスと二の脚の速さがあること。第2に、外々を回らされてもバテない豊富なスタミナと持続力があること。そして第3に、枠の不利を嘆くのではなく「揉まれないメリット」へと転換できる名手の冷徹な判断力です。包まれて前が詰まるリスクがゼロである外枠の特権を活かし、腹を括った先行策やロングスパートを打てる馬にとっては、8枠こそがオッズ妙味を爆発させる絶好の買い場へと変貌します。