「評判の良い薬用洗顔を使っているのに、なぜか新しいニキビが次々とできてしまう」という悩みは、ドラッグストアの店頭や美容皮膚科のカウンセリング現場でも頻繁に寄せられる相談です。日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン」でも指摘されている通り、ニキビの発症は毛穴の角化異常(詰まり)、皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖が複合的に絡み合っています。しかし、多くの人が陥っている最大の誤算は、「皮脂を取り除けばニキビは治る」という盲信による過剰洗顔にあります。
肌の最外層にある角層の厚みは、わずか約0.02ミリ(ラップ1枚分程度)しかありません。スクラブ入り洗顔や脱脂力の強すぎる石けん系界面活性剤で1日に何度もゴシゴシ擦り洗いを行うと、肌の水分蒸発を防いでいる細胞間脂質や天然保湿因子(NMF)まで根こそぎ洗い流されてしまいます。その結果、肌はバリア機能の破綻を察知し、失われた水分を守ろうと防衛本能で過剰な皮脂を分泌する「インナードライ型ニキビ」へと発展するのです。ネット上で「洗顔をやめたらニキビが引いた」といった極端な体験談が散見されるのも、皮脂の取りすぎで悲鳴を上げていた肌が、摩擦と脱脂から解放された一時的な現象として説明がつきます。
また、思春期ニキビと大人ニキビの性質の違いを無視した製品選びも、慢性化を招く大きな原因です。成長期の第二次性徴に伴うアンドロゲンの分泌急増で皮脂腺が肥大化し、Tゾーンを中心に発生する10代の思春期ニキビに対し、20代以降の大人ニキビは乾燥、ホルモンバランスの乱れ、睡眠不足、ターンオーバーの停滞が引き金となります。大人ニキビが発生しやすいUゾーン(フェイスラインや顎)に、10代向けの脱脂力が強力なサリチル酸高配合洗顔を漫然と使い続ければ、乾燥性炎症を誘発してニキビが悪化するのは自明の理です。