歴代CMの情緒的な映像美を決定づけたのが、緻密に選定されたタイアップ楽曲です。CMソングは単なるBGMではなく、受験や恋、友人との別れといった青春の節目に寄り添うアンセムとして機能してきました。
特に視聴者の胸を強く打ったのが、北乃きいさんが出演し、レミオロメンの楽曲とタイアップした一連のシリーズです。2009年にリリースされた「Sakura」や、2010年の「花鳥風月」が流れるなか、桜咲く坂道で葛藤を乗り越えようとする受験生の姿は、当時の10代だけでなく親世代の涙も誘いました。ボーカルの藤巻亮太さんが紡ぐ切なくも力強い言葉と旋律は、受験という孤独な闘いに挑む若者の心情と完全に同期していました。
さらに、絢香さんの「Jewelry day」や、MONKEY MAJIK、DREAMS COME TRUEなど、時代ごとのトップランナーたちが楽曲を提供してきました。いずれの楽曲にも共通しているのは、「頑張れ」と直接的に背中を押すだけではなく、「あなたの流した涙を知っている」という受容と共感のトーンが流れている点です。この音楽のあり方こそが、キットカットを単なる甘味から「感情を媒介するコミュニケーションツール」へと引き上げた原動力でした。