妖狐蔵馬がなぜ人間・南野秀一に転生せざるを得なかったのか。その発端は、魔界で繰り広げていた盗賊時代の過去に遡ります。数百年前、魔界全土を荒らし回っていた大悪党・妖狐蔵馬は、霊界特別防衛隊(特防隊)の精鋭ハンターから徹底的な包囲網を敷かれ、致命傷を負いました。
瀕死の状態で霊体となって人間界へ逃げ延びた彼は、胎児状態であった南野秀一の体に憑依。当初は妖力を回復させて再び魔界へ戻るまでの「一時的な隠れ蓑」にする計算でした。しかし、義理の母である南野志保利が無償の愛で自分を育ててくれたこと、そして自らが原因で母が負傷した際の献身的な姿に触れ、蔵馬の心境は決定的な変化を迎えます。冷酷だった妖怪の魂に、初めて「誰かを守りたい」という人間の情動が芽生えた瞬間でした。
さらに魔界編で明かされた重要エピソードが、魔界三大勢力の一角となった黄泉との因縁です。若き日の黄泉は蔵馬と手を組んでいた盗賊仲間のリーダー格でしたが、血気盛んで視野が狭く、チームの存続を脅かす存在でした。蔵馬は冷酷な計算のもと、刺客を放って黄泉を襲撃させ、視力を奪わせた黒幕だったのです。
数百年を経て対峙した黄泉に対し、蔵馬は言い逃れをすることなく過去の謀略を認めます。この過去の清算と贖罪のプロセスこそが、妖狐蔵馬というキャラクターに単なる「かっこいいダークヒーロー」を超えた深みを与えている決定的な要因です。