ビジネスの現場では、テキストツールの普及によって労いの届け方に大きな地殻変動が起きています。ビジネスチャット上で送られるリアクションスタンプや定型フレーズについて、SNSやビジネスコミュニティでは賛否両論のリアルな声が渦巻いています。
都内のITスタートアップに勤務する20代のUIデザイナーは、次のような体験を語ります。
「2週間かけて練り上げたデザイン案を納品した際、マネージャーからの返信はSlackの『お疲れ様スタンプ』1つだけでした。効率的なのは理解できますが、どこを評価されたのかも分からず、使い捨てのパーツのように感じてしまいました。逆に別プロジェクトの先輩が『あの色彩設計の意図、クライアントにしっかり刺さっていたよ。粘り強く調整してくれてありがとう』とコメントをくれたときは、涙が出るほど救われました」
一方、中間管理職の立場からも切実な苦悩が聞かれます。メガバンクの支店長代理(40代)は、部下への言葉選びについてこう指摘します。
「ハラスメントへの過剰な配慮から、『大変だったね』と声をかけることすら躊躇する管理職が増えています。『大変』と決めつけることが業務過多の告発と受け取られないか不安だからです。結果として『お疲れ様』という無難な言葉しか使えなくなっているのが今の組織の病巣です」
形式張った敬語よりも「自分の仕事が誰かの役に立った」という実感を与える言葉こそが求められています。このギャップを埋める鍵は、結果の成否を論じる前に「払われた労力そのもの」へ視線を向ける姿勢にあります。