桃を与える際、最も警戒しなければならないのが「皮」と「種」の存在です。これらは犬の体内において、物理的および化学的な破壊をもたらす凶器へと変貌します。
犬に桃の皮を食べさせてはいけない理由
桃の皮周辺にはポリフェノールなどの栄養素が含まれるものの、犬の消化器官では不溶性食物繊維が強靭すぎて分解できません。皮を付着させたまま与えると、胃腸内で消化されずに停滞し、激しい消化不良や下痢、嘔吐を引き起こします。さらに、皮の表面を覆う細かな産毛は、犬の口腔粘膜や喉、胃壁を物理的に刺激し、アレルギー様反応やアレルギー性皮膚炎の引き金になるケースも報告されています。市販の桃に付着している可能性のある残留農薬の観点からも、皮は完全に剥き取らなければなりません。
桃の種による腸閉塞のリスク
桃の種は硬く、中央が尖った楕円形をしており、表面はゴツゴツと隆起しています。好奇心旺盛な犬が種を丸呑みしてしまった場合、胃から十二指腸、小腸へと移動する過程で消化管壁に引っかかり、桃の種による腸閉塞(イレウス)を極めて高い確率で発生させます。腸管が完全に塞がれると、腸の血流が途絶えて組織が壊死し、腹膜炎を併発してわずか数十時間でショック死に至る危険性があります。
桃の種に含まれるアミグダリン中毒の恐怖
種のリスクは物理的な閉塞だけに留まりません。桃やスモモ、アンズといったバラ科植物の種子(仁)には、アミグダリンという青酸配糖体が含まれています。アミグダリンは犬の消化酵素や腸内細菌によって分解されると、猛毒の「シアン化水素(青酸)」を発生させます。シアン化水素は細胞の呼吸鎖複合体を阻害し、酸素があるにもかかわらず体内組織が窒息状態に陥ります。種を噛み砕いて誤飲した場合、痙攣、呼吸困難、チアノーゼ、瞳孔散大を引き起こし、最悪の場合は桃の種に含まれるアミグダリン中毒によって突然死を迎えることになります。