砂かぶり席の映り込みを語るうえで、もはや伝説的な存在となっているのが「溜席の妖精」と呼ばれる女性ファンだ。東京場所(初場所・夏場所・秋場所)が開催される両国国技館において、15日間連続で向正面の最前列・行司の真後ろあたりに座り、上品なワンピースやセットアップを身に纏って微動だにせず観戦する姿は、相撲ファンならずとも広く知られている。
民放の情報番組やスポーツ紙記者の取材、関係者の証言を総合すると、彼女の正体は都内在住の女性で、ご家族が長年にわたり大相撲を支えてきた熱心なタニマチ筋の維持員であると判明している。元劇団員やバレエ経験者と噂されるほどの凛とした姿勢、力士が礼をすれば静かに会釈を返す完璧なマナーは、SNS上で「所作が美しすぎる」「もはや国技館の名物」と称賛を浴び続けている。
向正面の砂かぶり席に座っている人々は、決して芸能人や話題のセレブだけではない。実際の内訳を分類すると、以下の層で構成されている。
まず最も重要なのが、日本相撲協会に多額の寄付を行っている「溜席維持員」だ。次に、土俵下で力士が負傷した際に即座に応急処置を行う「相撲診療所の医師・看護師」、さらに東西の審判委員の控えや親方衆、そして各相撲部屋を長年経済的に支える大口後援者(タニマチ)である。一般の観戦者が日常的に目にする世界とは一線を画す、独自の秩序と歴史的文脈がそこに存在する。