水崎綾女のキャリアにおける最大の転換点となったのが、2017年に公開された河瀨直美監督の映画『光』です。永瀬正敏が主演を務めた本作で、彼女は視覚障害者向けの映画音声ガイド制作に携わるヒロイン・尾崎美佐役に抜擢されました。
河瀨組の現場は、役の人生そのものを日常生活から生きることを求める過酷なリアリズムで知られます。水崎はクランクイン前から実際に音声ガイドの制作現場に通い詰め、目が見えない当事者たちと徹底的に対話を重ねました。当時の単独インタビューや舞台挨拶で彼女は「演じるのではなく、美佐として息をすることの苦しさと歓びを突きつけられた」と告白しています。
その真摯なアプローチは結実し、本作は第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、エキュメニカル審査員賞を受賞。現地メディアからも「繊細な光と影を体現する日本の新たな才能」と称賛され、彼女は華々しいレッドカーペットを堂々と歩きました。かつてグラビア界で消費されがちだった視線に対し、確固たる表現力で世界に実力を知らしめたこの瞬間こそ、水崎綾女の演技力の評判を決定的に高めた分岐点です。