「自分の誕生日花を3つのサイトで調べたら、まったく違う花が出てきた」という混乱は、多くの消費者が経験する疑問です。このブレが生じる根本的な原因は、誕生花と花言葉の成立史にあります。
誕生花の起源は古代ギリシャ・ローマ時代に遡ります。当時は「自然界のあらゆる草木には特定の神や精霊が宿り、日々の時間を司っている」というアニミズム的な暦法思想が存在していました。生まれた日に咲く花を身につけることで、悪霊から身を守り神の加護を受けるという魔除けの儀礼が原点です。
近代に入り、19世紀の英国ビクトリア朝で「花言葉(Floriography)」が大流行します。厳格な階級社会と道徳観のもと、直接言葉にできない恋愛感情や政治的意図を花に託して送り合う秘密の暗号通信として急速に発展しました。
その後、20世紀後半にこの概念が日本へ輸入された際、決定的な構造変化が起きます。ヨーロッパ原産の植物が日本の気候や特定の季節に咲かないという流通上の不都合が生じたのです。
そこで、日本の生花振興団体、フラワーデザイナー協会、さらには園芸関連の出版社や各生花チェーンが、国内の出荷サイクルや季節感に合わせて独自の「誕生花365日一覧」を次々に再編纂しました。結果として、国際的に単一の正解を決める公的機関が存在しないまま、各メディアや生花ブランドごとに異なるセレクションが並立する現状が定着したのです。