SNSやネット掲示板などで散見される「生成AIの進化によって美大生の価値は暴落するのではないか」という言説。現場取材を続けるジャーナリストの視点から言えば、この懸念は実態と正反対です。むしろ、誰でも美麗な画像を生成できる時代になったからこそ、プロフェッショナルとしての「本物の美大生」の市場価値は急上昇しています。
AIが代替できるのは「指示された通りのパターン画像を出力する末端の作業」に過ぎません。企業が喉から手が出るほど求めているのは、以下の3つの能力です。
- 未解決の課題を発見する観察眼:社会やユーザーが何に不便を感じ、何を欲しているのかを直感とリサーチで見つけ出す力。
- 世界観を設計する構想力:ブランドの思想やプロダクトのストーリーをゼロから構築する力。
- 他者と共創するコミュニケーション力:エンジニアやビジネスサイドの人間と共通言語を持ち、アイデアを具現化する力。
2019年に新設された武蔵野美術大学造形構想学部(クリエイティブイノベーション学科・映像学科)は、まさにこの社会構造の変化を先取りした学部です。新宿・市ヶ谷キャンパスを拠点に、企業や自治体とのリアルな産学協同プロジェクトを推進。デザイン思考をビジネスや社会問題の解決に直結させるカリキュラムは、経済界からも極めて高い評価を獲得しています。
ネット上の「美大=食えない画家になる場所」というイメージは、昭和の純粋美術至上主義の残像を引きずった誤解です。現代のムサビは、社会変革のリーダーを育てる高度なインキュベーション施設へと進化を遂げています。