ネット上の議論で頻繁に見受けられる誤解が、「ドラフト1位の即戦力ルーキーだから開幕から一軍のクリーンアップを打たなければ失敗」という短絡的な見方です。アマチュア時代の実績がどれほど突出していようとも、大卒ルーキーがプロ1年目から安定した数値を残すことの難しさは、近年のNPB全体のデータが証明しています。
第一の壁は、アマチュア時代とは異なる「投球の球威と変化球の精度」です。特にインコースの厳しい球への対応と、145キロを超えるフォークボール等の落ちる球へのアジャストには、最低でも2〜3ヶ月の実戦慣れを要します。第二の壁は、年間143試合という過酷なロードを戦い抜くための体力管理です。移動を伴う連戦のプレッシャーは、アマチュア時代の週末中心のリーグ戦とは次元が異なります。
渡部の場合、春先の離脱があったことで「じっくり実戦経験を積む期間」を首脳陣が確保しやすくなったという、怪我の功名とも言える側面があります。早期の一軍昇格に囚われず、自らのスイングスピードをプロ基準の球速に適応させる時間を得たことは、長いキャリアの観点から見ればむしろプラスに働く可能性を秘めています。