放送当時、日本中の子供たちに夜眠れなくなるほどの恐怖を植え付けたのが、悪魔の化身「カレ(HIM)」です。本名を口にすることすら恐れ多く、誰もが単に「カレ」と呼ぶこのヴィランは、これまでの海外アニメの常識を覆す異様な演出で描かれました。
真っ赤な肌に尖った耳、黒い髭をたくわえながら、ピンクのフリル付きチュチュとハイヒールを身に着け、ハサミのような両手を持つジェンダーレスな外見。普段はエコーのかかった不気味な甘い裏声で囁くように話しますが、激昂すると一転して画面が血のような赤に染まり、地割れのような重低音の怒号へと変化します。この音響と視覚のコントラストが、視聴者の生理的な不安感を極限まで煽りました。
特に視聴者の間で語り継がれているトラウマ回が、ガールズが未来へタイムワープしてしまうエピソード「暗黒の世界(Speed Demon)」です。50年後の荒廃したタウンズヴィルでは、ガールズ不在の隙を突いたカレによって世界が完全に支配されており、市民は生気を吸い取られ、ゾンビのような姿でガールズを「見捨てた犯人」として責め立てます。赤く淀んだ空、絶望に満ちたBGM、そして巨大化したカレがガールズを精神的に追い詰める描写は、子供向けアニメの枠を完全に踏み越えていました。
カレの攻撃は、拳による破壊ではなく「疑心暗鬼」「罪悪感」「孤立感」といった人間の心の弱さを巧みに突く心理戦です。ガールズの絆を内側から引き裂こうとするその手法は、大人になった今見返しても背筋が凍るほどの心理サスペンスとして完成されています。