「藤浪晋太郎」と検索するとサジェストに「病気」や「体調不良」といった不穏な単語が並ぶ現象は、主に3つの具体的出来事が発端となっています。第一の要因は、2020年3月にプロ野球界で初めて公表された新型コロナウイルス感染の経緯です。当時、藤浪投手は「コーヒーの匂いやワインの味がしない」という嗅覚・味覚の初期症状を自ら球団トレーナーに申し出てPCR検査を受け、陽性が判明しました。日本国内で嗅覚障害が初期症状として広く認知される契機となった出来事であり、メディアで大々的に連日報じられた記憶が、今なお「病気」という検索ワードとして定着しています。
第二の要因は、阪神タイガース時代から度々見られた予告先発の当日回避や発熱による登録抹消です。プロ野球選手にとって微熱や胃腸炎による一時的な離脱は珍しくありませんが、藤浪投手ほどの看板選手となると、1回の登板回避が夕刊紙やネットニュースのトップ見出しを飾り、「重い内科疾患を患っているのではないか」という尾ひれがついた憶測を生む土壌となりました。
そして第三の要因が、長年にわたりファンの間で議論されてきた投球フォームの乱れや制球難に伴う「イップス説」です。後述するように、イップスは精神医学やスポーツ医学の領域でも扱われる運動機能障害の一種であるため、「メンタルの病気」と短絡的に結びつけて捉えるユーザーが検索を重ねた結果、サジェストキーワードが強化されていった構造があります。