居場所を失った倉本氏が選んだのは、東京の栄華を捨て去り、当時ほとんどツテのなかった北海道・富良野市へ単身移住することでした。冬には氷点下20度を下回る厳しい大地で、薪を割り、自然と対峙しながら生きる生活は、傷ついた作家の魂を急速に再生させていきます。
過酷な風土の中で逞しく暮らす地元の人々との触れ合いは、東京のスタジオでは決して書けない「人間の真の営み」に気づくきっかけとなりました。こうして生み出されたプロットが、1981年にフジテレビ系列で放送を開始したドラマ『北の国から』です。
電気も水道もない廃屋から始まる黒板一家の物語は、文明社会への痛烈な問いかけとなり、日本中を涙と感動で包み込みました。もし1974年のNHKとの確執トラブルと失意の富良野移住がなければ、昭和から平成を代表する金字塔『北の国から』も、名門演劇塾「富良野塾」も世に存在しなかったことは間違いありません。