「不気味の谷(The Uncanny Valley)」という概念は、1970年に東京工業大学の名誉教授である森政弘氏がロボット工学の専門誌で提唱した仮説に端を発します。
森氏が提示した理論モデルでは、横軸に「人間の姿への類似度」、縦軸に「親近感(好感度)」をとったグラフが描かれます。対象が人間に似てくるにつれて、私たちの親近感は比例して高まります。おもちゃのロボットや愛嬌のあるキャラクターがその代表例です。
ところが、類似度が70〜80%前後という特定の閾値(いきち)に達した瞬間、親近感は垂直落下のカーブを描いてマイナス域へと急転直下します。これが「谷」と呼ばれる領域です。さらに類似度が極限まで高まり、本物の人間と見分けがつかないレベルに達すると、グラフは再び急上昇して最高度の親近感を獲得します。
特筆すべきは、対象が「動く」ことで谷の深さが何倍にも増幅される点です。静止画では自然に見えても、ぎこちない視線移動や硬い口元の動きが加わった途端、観察者が受ける恐怖感は何倍にも跳ね上がります。