多くの人が思い浮かべる『明日があるさ』の歌詞には、実は時代によって決定的な違いが存在します。オリジナル版の歌詞における主人公は、駅のホームで毎朝見かける女学生に恋い焦がれる内気な学生です。
「いつもの駅で いつもの電車」「声をかけようと 待ち伏せし」と試みるものの、結局恥ずかしさから声をかけられず、「明日があるさ 明日がある」と自分を慰めるストーリーでした。つまり、原曲における歌詞の核は、誰もが経験する甘酸っぱい思春期の片思いと諦めのユーモアだったのです。
ところが後年、この歌詞の世界観は鮮やかな転換を遂げます。恋の失敗を前向きに捉え直すフレーズ構造が、いつしか「仕事でミスをしても、明日また頑張ればいい」というビジネスパーソンのメンタリティと見事に共鳴。失恋の悔しさを晴らす言葉から、社会の荒波に揉まれるすべての人々を鼓舞するポジティブなアンセムへと進化していきました。