施設に隣接する片貝漁港。夜明け前の漆黒の海へ出港していった漁船が、甲板を満杯にしたイワシやハマグリとともに次々と接岸する。水揚げされたばかりの魚介がそのまま直売所へ運び込まれるスピード感は、市場直結を掲げる都市部のスーパーマーケットなど足元にも及ばない。
いま房総半島の太平洋沿岸では、気候変動や海洋環境の変化に伴い水産・観光業のあり方が大きな転換期を迎えている。かつて日本屈指の水揚げ量を誇ったイワシ漁の文化を絶やさず、いかに新しい世代の旅行者へ届け、地域経済の血流を維持するか。売り場に並ぶ黒光りしたハマグリの重みには、単なるグルメを超えた現場の切実な矜持が宿っている。