事件の起点となったのは、2023年5月下旬、札幌市中央区のクラブで開催されていたイベントでした。長年引きこもり状態にあったとされる田村瑠奈被告がこのクラブを訪れた際、女装コミュニティなどにも顔を出していた62歳の被害者男性と接触。2人はその日のうちに市内のラブホテルへと入室しました。
弁護側の冒頭陳述や法廷で読み上げられた供述内容によると、この初回のホテル利用時に決定的なトラブルが発生しています。瑠奈被告側は「避妊具を装着しない性行為を強要された」「意に反してスマートフォンで動画を撮影された」と主張。被告は過去に受けたトラウマも重なり、深刻な精神的打撃を受けたといいます。
帰宅後、娘の異変に気づいた父・田村修被告は事態の収拾に動きました。2023年6月、修被告は被害者男性を呼び出し、市内の喫茶店で直接対談。男性に対して「二度と娘に近づかないこと」「所持している動画を完全に消去すること」を要求し、口頭での合意を取り付けたとされます。
しかし、男性側の接触姿勢が完全に消え去ることはありませんでした。瑠奈被告の認識では「再び接触を試みられた」「約束が反故にされた」という危機感が増幅。瑠奈被告の中で被害者に対する激しい怒りと恐怖が臨界点を超え、男性を標的とした排除計画へと舵が切られることになります。単なる男女の行き違いではなく、性的尊厳の侵害という認識が、瑠奈被告の精神世界の中で復讐という極端な形に変貌していった過程が法廷で浮き彫りとなっています。