国内の現存劇場において、象徴的な存在として確固たる地位を築いているのが、東京・上野に位置する「上野オークラ劇場」です。大蔵映画の直営館として長い歴史を誇る同館は、地下にゲイポルノ専門館である「上野特選劇場」を併設する地下複合館として、国内外の映画関係者からも広く知られています。
現場のロビーに足を踏み入れると、昭和の香りを漂わせる手書き風の看板やスチール写真が壁一面に並び、独特の静けさとノスタルジーが漂います。客層の動態を詳しく観察すると、かつての「中年男性が人目を忍んで通う場所」というステレオタイプとは異なる実態が浮かび上がります。
劇場の最前線を支えているのは、長年通い詰める70代〜80代のシニア常連客です。彼らにとって劇場は、単なる映像鑑賞の場にとどまらず、空調の効いた静かな空間で一日を過ごす「サードプレイス(第3の居場所)」としての機能を果たしています。しかし、ここ数年で際立つのは、20代〜30代のシネフィル(熱狂的映画ファン)や美大生、さらには女性客の姿です。
大蔵映画が近年展開している「OP PICTURES+(オーピーピクチャーズ・プラス)」は、ピンク映画の枠組みで製作された良質な人間ドラマやコメディを一般映画館でも上映可能なR15+版に再編集し、テアトル新宿などでレイトショー公開する取り組みです。このレーベルをきっかけに監督や俳優のファンになった若者が、「オリジナル完全版(R18+)を本来の聖地で見たい」と上野オークラ劇場の門を叩くケースが定着しています。SNS上の評判でも、「昭和のアングラ文化がそのまま保存された貴重な空間」「フィルム上映の質感と音響に圧倒された」といった好意的なレビューが多く見られます。