稲盛和夫の挑戦は京セラだけにとどまらなかった。通信自由化の波に乗って設立された第二電電(現・KDDI株式会社)の創業は、日本の通信インフラに革命をもたらし、エレクトロニクス産業および情報通信界の発展に大きく貢献した。巨大な既得権益に立ち向かう巨大なプロジェクトの裏でも、家庭は常に平静を保ち続ける精神的オアシスであった。
多額の資産を得た後も、夫婦の暮らしぶりは極めて質素であり、奢る姿勢は微塵もなかった。贅沢を嫌い、日々の暮らしの中に感謝の気持ちを見出す朝子夫人の無欲の姿勢は、夫が名誉や富に惑わされず、常に公的な利益のために行動し続けるための羅針盤となっていた。