日本の食卓にエビチリを普及させた最大の功労者といえば、伝説の中華シェフ・陳建一氏の父である陳建民氏、そしてその志を継ぎ長年にわたり四川料理の魅力を伝え続けた陳建一氏の名を挙げないわけにはいかない。NHK「きょうの料理」をはじめとする数々のテレビ番組を通じ、辛味の強い本場の味を日本の家庭向けにアレンジする際、隠し味として思い切ってトマトケチャップを導入した工夫は、まさに料理界の歴史的革命だった。
辛さに慣れていない子どもからお年寄りまで美味しく食べられるよう配慮されたその柔軟な発想は、瞬く間に全国へと広がった。トマトケチャップに含まれるグルタミン酸と有機酸が、エビのタンパク質と合わさることで強力なシナジー効果を発揮。専門店の高価な調味料を使わずとも、深みのあるソースが数分で完成する下地は、この時代に完成したのである。