水は重い。脱水をかけた直後のニットでさえ、自重の数十パーセントに相当する水分を抱え込んでいる。特にウールや極細のカシミヤといった高級獣毛繊維は、湿気を吸うと繊維のキューティクルが開き、極めて外力に弱く変形しやすい状態に陥る。このタイミングで通常の細いワイヤーハンガーに掛ければどうなるか。結果は明白だ。
肩の細い接触面だけに数十から数百グラムの荷重が集中する。濡れて柔らかくなった繊維は引き伸ばされ、乾く過程でその形状のまま固定されてしまう。これが、多くの人を絶望させる「肩ポコ」現象の正体だ。一度伸びきってしまった獣毛の分子結合を元に戻すには、スチームアイロンを浮かし当てて根気強く縮めるほかなく、完全修復のハードルは極めて高い。