無理数の発見は、古代ギリシャの数学者ピタゴラスの学派を根底から揺るがした大事件だった。正方形の対角線の長さが、どのような整数の比(分数)でも表せないという事実は、当時の世界観を覆す禁忌の知識とされた。この「割り切れない美しさ」を持つ数こそが、今日の私たちが学ぶ平方根である。
私たちが日常的に使っている根号「√」の形を定着させたのは、17世紀の哲学者であり数学者でもあったルネ・デカルトだ。ラテン語で根を意味する「radix」の頭文字「r」を変形させ、計算式の上に横線を引く記号法を考案した。数百年もの歴史を経て磨き上げられたこの記号の背後には、数の連続性を解き明かそうとした人類の知の格闘が存在する。記号の成り立ちを知ることは、単なる丸暗記を超えた知的好奇心を刺激する。