京都の味付けの根底を支えるのは、何よりも水と昆布、そして鰹節から引かれる極上の出汁である。茶の湯の精神から生まれた懐石料理は、器の選定から盛り付けの余白に至るまで、美意識の極致を表現する。無駄を削ぎ落とし、素材本来の滋味を際立たせる引き算の美学がそこにある。
対照的に、家庭の食卓で愛されてきたのが「おばんざい」だ。聖護院大根、九条ねぎ、万願寺とうがらし。採れたての京野菜を無駄なく使い、素朴ながら滋味あふれる煮物やおひたしに仕立てる。派手さはない。だが、一口含めば乾いた体に染み渡るような優しさと、先人たちの暮らしの知恵が詰まっている。