中将堂の静かな佇まいに全国区のスポットライトが当たった契機は少なくない。なかでも映像美で名高い『新日本風土記 大和路・古寺を巡る物語』で當麻寺の門前菓子として情緒豊かに描かれたことは、文化層の関心に火をつけた。現在でもNHKオンデマンドで配信を視聴した歴史ファンが、聖地巡礼のごとくこの店を目指す。
さらに近年では、YouTubeを中心とした個人発信のトラベル&フードドキュメンタリー動画が、若い世代や外国人観光客の関心を呼び覚ましている。職人が巨大な蒸籠を扱い、手際よく餡を絞っていく数分間の映像が数十万回再生される時代。だが、どれほどデジタル空間で拡散されようと、現地で漂うあの青々としたよもぎの熱気だけは、画面越しに再現することはできない。