物語最大のクライマックスは、真珠の真意と事件の全貌が明かされる法廷・脱走劇のシークエンスだ。真珠が語ってきた無数の「嘘」の奥底に何があったのか。読者の間で長らく議論されてきた未回収の疑問符――なぜ彼女は遺体の頭部を隠し続けたのか、そして彼女の本当の知能や年齢はどうだったのかという点について、作品は極めて人間味あふれる解答を提示した。
真珠が本当に欲していたのは、無罪放免でも同情でもなく、自分という存在をまるごと肯定してくれる「たった一人の誰か」だった。アラタが危険を冒してまで彼女の狂気と向き合い、嘘を暴きながらもその孤独を抱きしめた瞬間、狂気じみた獄中結婚は真実の絆へと昇華した。法による裁きを超えたアラタの選択は、決して道徳的な正解ではないかもしれない。しかし、誰も救えなかった少女の魂を最後に掬い上げた結末は、サスペンスの枠を超えた戦慄と深い余韻を読者に刻み込んだ。