では、学問としての「言語学」においてはどう処理されるのだろうか。専門的な見地から言えば、名詞、特に具体的な生き物を指す普通名詞には、厳密な意味での対義語(反対語)は存在しない。例えば「男」の反対は「女」、「上」の反対は「下」のように、軸が明確な相補的関係や度量関係にある言葉にしか対義語は成り立たないからだ。
文豪・夏目漱石の代表作『吾輩は猫である』を思い返してみても、語り手である猫は自身の存在をただ「猫」として客観視しており、何かの対極として自己を定義してはいない。言語学的に見れば、「猫の反対」は「猫ではないすべてのもの(非猫)」という無味乾燥な定義に帰着してしまうのが冷徹な事実なのだ。