日本に似た国旗の話題で真っ先に挙げられるのが、パラオ国旗です。南洋の美しい海を想起させる淡いブルーの旗面に、ぽっかりと浮かぶ黄金色の丸。この美しいデザインをめぐり、日本のネット掲示板やSNSでは長年、次のような説が熱烈に拡散されてきました。
「かつて日本統治下で近代化を経験したパラオは、感謝と敬意を込めて日本の日の丸を模して国旗を作った。ただし、偉大な日本に対して太陽(日の丸)を掲げるのは畏れ多いため、太陽を優しく照らす『月』とし、さらに中心を少しずらして太陽の前に出ないように遠慮した。」
非常に情緒的で日本人の愛国心をくすぐるこの言説ですが、歴史的事実の検証からはまったく異なる実像が浮かび上がります。
パラオ国旗は、1979年に実施された国民的なデザイン公募(応募総数1,000点以上)の中から選出されたものです。当選者であるジョン・ブラウ・スケボング(John Blau Skebong)氏は、後にメディアの特番インタビューや歴史研究者からの取材に対し、「青はパラオを囲む豊かな太平洋と主権独立、黄色い丸は人々に実りと平和をもたらす満月を意味している」と明言しています。さらに「日の丸を参考にしたのか」という問いに対しては、「デザインの着想はあくまでパラオ古来の伝統と自然であり、日本国旗を模倣したり意図して遠慮したわけではない」と明確に否定しています。
パラオ文化において満月は、農業の収穫や豊漁、祝祭の催行に欠かせない神聖なタイミングを指します。パラオが親日感情を持つ国であることは間違いありませんが、国旗の誕生はあくまで「パラオ国民自身の主権とアイデンティティの結晶」であるという事実を認識することが肝要です。