なめたカレイの調理で最大の難関となるのが、皮表面を覆う特有の強烈な「ぬめり」です。このぬめりは魚体を細菌や乾燥から守る粘液タンパク質ですが、酸化しやすく生臭さの主原因となります。プロの現場では、煮汁に入れる前に以下の3段階の下処理を必ず実施します。
まず第1ステップとして、包丁の背や金たわしを使い、皮表面のぬめりと残ったウロコを尾から頭に向かって丁寧にこそげ落とします。特に皮の黒い面だけでなく、裏側の白い面にも頑固な粘液が付着しているため、両面を流水で洗い流しながらしっかりと除去します。
第2ステップは、熱湯を用いた「霜降り(湯通し)」です。バットに並べた切り身に対し、80℃〜90℃程度の熱湯を皮目からまんべんなく回しかけます。熱湯をかけると、皮の表面に残ったタンパク質が白く凝固します。直後に冷水(氷水)へ落とし、浮き出た白い汚れや血合いの残りを指の腹で優しく撫でるように洗い落とします。このひと手間により、生臭さの成分であるトリメチルアミンが完全にリセットされます。
第3ステップとして、皮が厚く煮ている最中に破れやすいなめたカレイには、皮の中央に浅く「十文字の飾り包丁」を入れます。これにより、急激な熱収縮による煮崩れを防ぐと同時に、分厚い身の中心部や魚卵の奥まで煮汁を短時間で均一に行き渡らせることが可能になります。