兵庫県小野市が誇る食の厚みを支えているのは、間違いなく割烹や料亭をはじめとする日本料理の層の厚さだ。山田錦の特A地区を抱える北播磨の米どころであり、清らかな水と昼夜の寒暖差がもたらす根菜や葉物の滋味は群を抜く。ミシュランガイドの調査員すら足を止めたといわれる隠れ家的な小料理屋では、派手な演出を削ぎ落とし、素材の輪郭を際立たせる滋味深い会席が供される。
「朝掘りの筍や採れたての旬菜を、その日のうちに煮切った一番出汁で炊き上げる。それ以上の贅沢はありませんよ」。そう話す店主の手元からは、長年培われた包丁捌きの冴えが光る。観光地の派手さとは無縁の、路地にひっそりと佇む店構え。だが一歩足を踏み入れれば、そこには都心の高級割烹に一歩も引けを取らない豊饒な世界が広がっている。