もともとムスクは、ジャコウジカの分泌物から採取される極めて動物的で濃厚なオリエンタルノートの代表格でした。しかし、倫理的観点や野生動物保護の法規制を受け、20世紀後半からフレグランス産業は劇的な構造改革を迫られます。そこで登場したのが、安全で持続可能な合成香料です。
なかでも「ガラクソリド」をはじめとする合成ムスク分子の開発は、香水史における最大のブレイクスルーとなりました。重厚で野性味の強かった動物香料から重さを削ぎ落とし、純度の高い“透明な温もり”を抽出することに成功。1980年代にザボディショップが発売したクルエルティフリーのフレグランスが火付け役となり、世界中で「ホワイトムスク」という新しい香調概念が一気に開花しました。