本作で初めてシングル表題曲の単独センターを務めた齊藤なぎさの存在感は、楽曲の哀愁を何倍にも増幅させた。当時まだ10代半ばだった彼女が見せた、憂いを帯びた瞳と涙を堪える表情。幼さと背伸びした女性の脆さが同居する歌声は、楽曲の世界観に決定的な説得力を与えた。
映像作家・山戸結希監督が手がけたミュージックビデオもまた、緻密なストーリーテリングで話題を呼んだ。メンバー全員がそれぞれ異なるシチュエーションで「流す本気の涙」。交差点、部屋の片隅、夜のバス停。画面越しに伝わる孤独の質感は、単なるプロモーション映像の域を遥かに超えている。演技指導においてメンバー一人ひとりに詳細なバックストーリーが与えられていたという裏設定は、ファンの間でも語り草だ。それぞれの登場人物が抱える「報われない恋」の背景を知ることで、映像の解像度は格段に上がる。