日常の会話では曖昧に濁されがちですが、経膣分娩(自然分娩など)において赤ちゃんが生まれる場所の出口となる器官は「膣」です。排尿する「尿道」や排便する「肛門」とは完全に独立した別の器官であり、女性の体には最初から命を外へ送り出すための専用ルートが備わっています。
医学的には、赤ちゃんが通る道全体を総称して産道の仕組みと捉えます。産道は大きく2つの要素に分かれています。
ひとつは、骨盤の骨格で構成される「骨産道(こつさんどう)」です。骨であるため伸び縮みせず、赤ちゃんにとっては最初の難所となります。もうひとつは、子宮の出口(子宮頚部)から膣、外陰部に至る筋肉や皮膚でできた「軟産道(なんさんどう)」です。
普段の膣は数センチ程度の細い管状ですが、妊娠末期になるとホルモンの作用によって組織が劇的に軟化します。この驚くべき膣の伸縮性により、分娩時には直径約10cm近くある赤ちゃんの頭部を安全に通過させられるよう、柔軟に広がる準備が整えられます。