インターネット上の質問サイトや知恵袋で頻繁に見受けられるのが、「外出先からNHKプラスで大谷翔平の試合を見ようとしたら、中継枠だけ『配信できません』と黒塗りになっていた」という戸惑いの声です。NHKの受信契約を結んでいる世帯であれば追加負担なしで利用できる「NHKプラス」ですが、メジャーリーグ中継に関しては一切の見逃し配信および同時配信が行われません。
この現象の背景には、国際スポーツビジネスにおける厳格な放映権(メディアライツ)の線引きが存在します。MLB機構が販売するライセンスは、「放送権(地上波・衛星テレビ)」と「公衆送信権(インターネット・モバイルストリーミング)」で明確に別建ての契約体系が組まれています。
NHKが取得している権利はあくまで日本国内向けの「テレビジョン放送権」であり、インターネット上で番組を再送信する包括的な権利は含まれていません。ストリーミング配信権は、MLB公式の直営サービス(MLB.TV)や、巨額の投資で独占・準独占配信枠を獲得したSPOTV NOW、ABEMAといった配信事業者に別途ライセンスアウトされています。そのため、NHKが番組を自社アプリの「NHKプラス」へそのまま流すことは契約違反に該当し、権利侵害を防ぐために配信制限(IPブロック・黒画面処理)が厳密に施されています。
「NHKの受信料を払っているのだから、NHKプラスでも大谷の中継が見られるはずだ」という認識は法的な誤認であり、契約構造の盲点と言えます。外出先や移動中に生中継やアーカイブを楽しみたい場合は、最初からNHKプラスをあてにするのではなく、ABEMAなどの正規配信プラットフォームを立ち上げるのが確実なアプローチです。