母が急逝した2010年5月16日、横山裕は単独ソロコンサートツアー『横山YOUがヤっちゃいます〜第3弾〜』の青森公演の真っ最中でした。開演直前の楽屋に飛び込んできた「母親が倒れて心肺停止になった」という悲報。公演を取りやめて病院へ急行することも許される局面において、彼はステージに立つ選択を下しました。
「どんなに辛いことがあっても、自分を見に来てくれた観客に笑顔を届けるのがプロの仕事である」という矜持を胸に、彼は母の死の事実を客席に明かすことなく、最後まで歌い、踊り、笑わせ続けました。終演後に急行した霊安室で冷たくなった母と対面した際、溢れ出る涙を止めることはできなかったといいます。
そのソロコンサートで象徴的に歌われていたのが、横山が作詞を手掛け、メンバーの安田章大が作曲したオリジナル楽曲『オニギシ』です。タイトルの由来は、幼い頃に母親が作ってくれた「おにぎり」の不揃いな形や、母がメモ書きに「おにぎり」と書くところを「オニギシ」と書き間違えていた温かいエピソードに由来します。
歌詞には、貧しい暮らしの中で不器用ながらも自分たちを育ててくれた母への感謝と、照れくさくて口にできなかった愛情が率直に綴られています。最愛の母を失った日のステージでも、彼はこの『オニギシ』を歌い上げました。歌唱中の横山の瞳に滲んでいた涙の意味を、当時のファンは終演後の報道で知ることとなり、日本中のファンの涙を誘いました。