気象庁が大津波警報を発表した歴史を振り返ると、自然の猛威と人間の初動判断が生死を分けた生々しい現実が浮かび上がります。
2011年3月11日の東日本大震災では、発生直後の第1報で宮城県に予想高さ6m、岩手県・福島県に3mの大津波警報が発表されました。しかし、実際には10mを超える巨大津波が押し寄せ、防潮堤を軽々と越水。当時の被災者手記には「最初の『3m』という数字を聞いて自宅の2階で大丈夫だと思い込んでしまった」「引き波を見て様子を見に海岸へ戻ってしまった」という痛恨の証言が数多く残されています。この教訓をもとに、現在の「巨大」という表現を用いる新システムへと改定されました。
また、2024年1月1日の能登半島地震においては、石川県能登地方に対して瞬時に大津波警報(予想の高さ5m)が発表されました。震源が沿岸に極めて近かったため、地震発生からわずか1分足らずで第1波が到達した地域もあり、テレビ局のアナウンサーによる「今すぐ逃げてください!テレビを見ていないで逃げてください!」という絶叫に近い呼びかけが緊迫感を伝えました。当時の特番取材に応じた輪島市の住民は、「揺れが収まった直後、家族の手を引いて着の身着のままで裏山へ駆け上がった。数分後に下の道路が濁流に飲み込まれた」と証言しています。
海水浴場や港湾などの屋外において、サイレンや防災無線が聞き取りにくい状況を打破するために導入されたのが津波フラッグと避難周知の仕組みです。赤と白の格子模様の旗をライフセーバーや監視員が掲げることで、耳の不自由な方や激しい波音・暴風雨の中にいる人々に対しても、視覚的に「直ちに大津波警報・津波警報が発表された」事実を伝える国際的基準が運用されています。