ネットの知恵袋やSNSでは「採算が合わずに打ち切られた」「トラブルが多発したせいだ」といったネガティブな噂も散見されます。しかし、航空ビジネスの力学を紐解くと、ピーチガチャ終了理由は全く異なる経営判断に根ざしていることが分かります。
最大の要因は、航空業界を取り巻くロードファクター(座席利用率)の劇的な変化です。旅くじが誕生した2021年秋は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により移動需要が歴史的な低水準に落ち込んでいた時期でした。当時のPeachにとって、空席のまま飛行機を飛ばすよりは、5,000円の原資で確実に搭乗者を創出し、付随する空港利用料や手荷物手数料、現地消費を促す方が圧倒的に合理的だったのです。
しかし、行動制限の完全撤廃とインバウンド(訪日外国人客)の爆発的な急増により、国内線・国際線ともに予約率は高水準へ回復しました。通常運賃で座席が埋まる局面において、意図的に収益率の低い割引ポイントを配る必然性は薄れます。現場のマーケティング担当者が当時の取材で「ミッションは旅行に出るきっかけを失っていた人々の背中を押すことだった」と振り返っている通り、話題づくりとブランド認知という目的を完遂したことによる、極めて計画的な幕引きでした。