「骨が急激に伸びているから関節がきしんで痛む」――かつてまことしやかに語られていたこの言説は、現在の医学界では否定されています。日本小児整形外科学会の知見によれば、骨の長軸方向の成長自体に知覚神経を直接刺激するメカニズムは存在しません。では、なぜ子どもたちは特定の時間帯に膝の痛みを訴えるのでしょうか。
膝の成長痛の原因と痛む理由として、現在有力視されているのは「筋骨格の未熟性に伴う下肢の筋肉疲労」と「日中の心理的緊張がもたらす自律神経の乱れ」の複合的な作用です。3歳から12歳前後の小児期は、骨の発達に対して筋肉や腱の柔軟性が追いついておらず、日中の跳躍やダッシュによる負荷が膝蓋腱や筋肉の付着部に疲労物質として蓄積します。これが就寝前の副交感神経優位なリラックス状態に移行した際、脳が痛みのシグナルとして強く知覚するのです。
膝の成長痛は何歳まで続くかの目安については、発症ピークが「幼児期(3〜5歳)」と「小学校中学年(8〜10歳前後)」の2峰性を示すことが統計的に判明しています。骨格構造が大人に近づく12歳頃までには大部分が自然消失するため、過度な悲観は不要ですが、成長過程の繊細なアンバランスが引き起こす生理的現象として捉える必要があります。
また、臨床現場で親御さんから多く寄せられるのが「成長痛で膝の裏が痛む理由は何なのか」という相談です。膝の裏には太ももの裏側の筋肉群(ハムストリングス)やふくらはぎの腓腹筋の起点が存在し、日中の姿勢維持や運動によって過剰な筋緊張が生じやすい部位です。膝の裏の違和感は、これらの筋肉の過緊張による放散痛であることが多い一方で、関節包に滑液がたまる「ベーカー嚢腫」などの良性腫瘤が隠れている可能性もあるため、触診による観察が欠かせません。